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* 「ライオンの子」番外編CASE? 恋人:04
 子ウサギのようにぴょこんぴょこんと跳ねながら走る倫子の足はめちゃくちゃ遅い。
 総志朗はまったりとしたペースで倫子を追いかける。
 倫子は二百メートルトラックがある小さな校庭を横切り、二棟あるレンガ色の校舎の方へと走ってゆく。

 
 校舎と校舎の間の細い道を抜けると、そこは小さな花壇があるだけになっていた。
 袋小路になっているため、倫子は行く先を失い、立ち止まる。
 その一瞬の隙をついて、総志朗は倫子の腕をつかんだ。
 倫子は兎のように跳ねて、ばっと振り返ってくる。その拍子に、倫子のツインテールがバシッバシッと総志朗の顔を鞭のようにかすめていった。
 けっこう痛い。

「オレ、絶対ツインテールと相性悪い……」

 顔を手で覆って、痛みに耐えていると、倫子は総志朗からぱっと離れた。

「なんで、梨恵りんごじゃないりんご〜っ!」

 追いかけてきたのが総志朗だと知り、倫子は思いっきり肩を落とす。

「悪かったな」
「悪いりんご! 土下座して謝れりんご!」
「なんでだよ」

 倫子に歩み寄ると、倫子はびくりと肩をふるわせ、後ずさった。
 だが、すぐ後ろは壁。逃げ道は無い。

「つうかさあ、なんで梨恵さんが好きなわけ? 毎日角生やしてるし、ヨーグルト食べないと便秘になるし、すっげえ俺様だし、トイレとかちょー長いんだぞ」
「なしえりんごはうんちとかしないりんご!」
「なにその大昔のアイドル設定」

 倫子はぷくうと頬をふくらませ、総志朗を睨みつける。

「梨恵りんごはすごくすごく優しいりんご。私みたいな変な子にも優しくしてくれるりんご。落ち込んでたら、慰めてくれるし、元気付けてくれるし、そばにいてくれるし、たまに怖いこともあるけど、いつもいつもりんごのこと、気にかけてくれるりんご」
「自分が『変』だって自覚はあるのね」
「うるさいりんご!」

 梨恵さんが優しいのは認めるけど、と総志朗はつぶやき、どうするものかと思案する。
 倫子は梨恵に本気かもしれない。あきらめさせる手段はあるのだろうか。

「梨恵さんとオレ、付き合ってんだ。あきらめてくれよ」
「梨恵りんごを悪く言うやつに、梨恵りんごは譲れないりんご」
「いやいや、オレ、めっちゃ梨恵りんごのこと愛してるよ。納豆買ってくれるしぃ、テレビのリモコン譲ってくれるしぃ、お菓子とかつくってくれたりするしぃ」
「お母さんと子どもみたいりんご」
「き、気のせい気のせい」

 倫子は完璧に疑いに満ちた目をしている。腕を組み、半眼で総志朗を睨みつけている。

「あ、ちょっと動くな」

 倫子の頬に触れるか触れないかのかんじで手をすべらせ、耳横の髪に触れた。
 途端に倫子の顔が真っ赤に染まる。

「虫がついてた」
「う、あ、そ、そう」

 倫子の慌てぶりに、総志朗はニタリと笑う。

「意外とウブ?」
「うるさいりんご!」

 倫子の後ろの壁につき、倫子ににじり寄る。倫子はぱくぱくと金魚のように口を開閉させ、顔をさらに赤くした。その名の通り、りんごみたいだ。

「かわいい」
「え? な、ど? うえ?」

 倫子は奇声を発しながら、みるみる身を縮こまらせていく。

「オレ、梨恵りんごより、りんごちゃんのほうが好みかも」
「ええええええええええっ」



☆☆☆
久々の番外編です。
本編で総志朗が一切登場しなくなったので、なんだか懐かしい感じがします。

総志朗の顔をツインテールがバシバシと当たるのは、これで二回目。
本編『CASE6 いじめられっ子』で同じ目に合ってます(笑)
拍手する 2008.01.31 Thursday * 02:20 | 長編小説「ライオンの子」番外編 | comments(0) | trackbacks(0)
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