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* 「ライオンの子」番外編 CASE? 恋人:03
「ライオンの子」番外編 CASE? 恋人:03

「木下倫子(きのしたのりこ)です。はじめましてりんご!」
「は、はじめまして。加倉総志朗です」
「りんごちゃんって呼んでりんご!」

 総志朗は笑いをかみ殺しながら、梨恵と倫子を交互に見る。169センチの梨恵と、梨恵のあご位までしかない身長の倫子。意外とお似合いだ。

「あのね、倫子。この人と私、付き合ってるの」
「ううん、りんごちゃんって呼んでよう。梨恵りんご〜」

 梨恵の額に血管が浮き出たことを、総志朗は見逃さない。だが、倫子は全く気付いていないのか、梨恵の腕につかまって踵を上げ下げしている。るんるんしている、という表現が適切だろう。

「ねえ、倫子。聞いてる? この人と私、付き合ってるの」
「ううん、りんごちゃんって呼んでよう」
「ねえ、倫子。聞いてる? この人と私、付き合ってるの」
「ううん、りんごちゃんって呼んでよう」
「ねえ、倫子。聞いてる? この人と……」
「っちょ、ちょっと梨恵さん! この不毛な会話、いつまで続くの!」

 堂々巡りする会話にあきれて、総志朗が割ってはいる。
 梨恵は一点だけを見ているようでどこも見ていない目で、まだ「付き合ってるの」とぼやいていた。魂が抜けたような顔をしている。気のせいかエクトプラズムが口から出ている。

「あのさ、りんごちゃん。オレと梨恵さん、付き合ってるんだ。悪いんだけど、梨恵さんのことは諦めてくれないかな」
「誰と誰が付き合ってるの? あたしと梨恵りんごのほうが先に付き合い始めてるよ。横恋慕は止めるりんご!」
「いや、付き合ってないでしょ」
「あなたと梨恵りんごがでしょ」
「そう、オレと梨恵りんごが。ってそうじゃねえ! りんごちゃんと梨恵りんごが!」

 会話が会話にならない。高い声をあげて、倫子は梨恵の腕にしがみついて離れない。梨恵は木のように動かない。

「とにかく! オレと梨恵りんごは相思相愛なんだよ。だから、諦めてくれ」
「…………んごって呼ぶな」

 地獄の底から這い出て来た地鳴りのような声。倫子も驚いたのか、梨恵から手を離し、数センチ距離を取る。
 総志朗も思わず後ずさってしまった。

「な、梨恵りんご?」

 そっと梨恵の顔色を伺う。顔面蒼白の顔で、梨恵は総志朗をぎろりと睨んだ。総志朗の顔もあっという間に真っ青に変わる。

「なんで、あんたまで梨恵りんごって呼ぶわけ? グーで殴られるのと、チョキで目ん玉えぐられるのと、パーで叩かれるの、どれがいい?」
「どれも嫌です!」
「あんたも。梨恵りんごって呼ぶの、やめてくれない?」

 頭のネジが一本取れてしまったらしい。倫子の前では努めて笑顔で振舞っていたのに、梨恵に笑顔はもう無い。
 倫子も梨恵の豹変っぷり――本性と言うべきか――に驚き、ただただ「うん、うん」とうなずいた。

「もう一度、言うわよ。私とこいつ、付き合ってるの。だから、諦めて」
「う、う、うわああああああん!」

 口をへの字に曲げ、目からは大粒の涙を流し、倫子は校舎の方にいきなり走って行ってしまった。金色に結わえた髪の毛が兎の耳のようにぴょこんぴょこんと揺れて、遠ざかってゆく。

「梨恵さん、怖すぎ。オレ、追いかけるよ」


つづく……

***
予告した日より遅くなってしまいました……すいません。





拍手する 2007.12.21 Friday * 02:52 | 長編小説「ライオンの子」番外編 | comments(0) | trackbacks(0)
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