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拍手する 2009.11.05 Thursday * | - | - | -
* 眠れぬ夜は、羊を数える。
五分企画に参加した時の作品「眠れぬ夜は、羊を数える」の初稿バージョンを見つけたので、
アップしてみます。

こちらはかなりソフト。
何を間違って、五分に出したやつがあんなダークになったのか(笑)

五分企画の作品は、深読みすると主人公がとんでもないことをしでかしてることがわかるように書いたんです。
とある作者様に「気付きました?」って聞いたら、気付かなかったみたいで。
あとあと自分で読み返したら、全然わからなかった(笑)
これじゃ誰も気付かないってorz・・・と反省。

「クーラーの風を浴びた体は、氷のように私を冷やした」「彼は起きない」「腹を割かれ、井戸に落とされ、その罪を思い知るのだ」とかが、この物語の真相なんだけど。

「そうして私は、哀れで滑稽なその醜態をさらして、それでもなお、強く――」で捕まる覚悟してるんです。

暗号を解けばすぐにわかるようにしたつもりだったけど、全然わからないですよねー。ですよねー!\(^^)/

女ってさ、かよわいふりしてるけど、実際かなり強いんですよ。
だまされちゃいかんですよ(笑)


そんなわけで、「眠れぬ夜には、羊を数える」ソフトで救いのあるバージョン。
気になる方はどうぞです。
ちなみに得意技☆初稿のまんま☆なので、粗は見なかったふりしてやってください(だめじゃん)

↓↓↓


眠れぬ夜は羊を数える。




 互いのすべてをむさぼるような激しいキスも。
 肌を這っていくごつごつとした手も。
 体の中心を貫く快感も。


 ただの本能にすぎない。


 彼の手が太ももをなぞって、焦らすように往復する。やがて到達するその指の感触に、私は気付くと腰をあげて、「早く」とねだっていた。
 彼の荒い息遣いに、ひたすら呼吸を合わせて。
 彼と私が繋がることに、満足する。

 たとえ体が繋がっても、心までは繋がることはないのに。





「羊が五匹……」

 ぽつりと出た言葉に、寄り添うように眠っていた彼が「なに?」と笑った。
 今、私の横で寝息を漏らしていたのは元彼であって、彼氏ではない。
 別れてからもう三ヵ月も立つ。なのに、私と彼は、こうして体だけの関係をずっと続けている。
 彼は私と別れてすぐに、別の女と付き合いだした。そのくせ、「体の相性はお前との方がいい」なんて言って、週に一度、私のところに通ってくる。
 端的に言ってしまえば、セフレに成り下がったのだ。

 空洞になった心に、空しさだけが残る。
 生ぬるい風だけが吹きぬけて、肌に残る湿気に嫌悪感を抱くように。

 いつの頃からか、私は夜に眠れなくなった。
 心配した友人が、ふわふわした羊の抱き枕をくれた。
 眠れない夜には、羊の数を数えるなんて、あまりに初歩的で平凡すぎる方法を、私はひたすら毎夜繰り返す。
 羊の抱き枕を、人の温もりに変えて。


 最初は、彼の温もりに包まれて安心して眠りに落ちることが出来た。
 程よい倦怠感に包まれながら、彼はまだ私のものだと醜い独占欲を迸らせて、彼の腕に愛を求めた。

 そんなの、私の願望にしかすぎないのに。

 彼が、己の欲望を満足させるためだけに私のところに来ているなんて、すぐに気付いた。気付かないふりを続けて、失うことを避けようと必死だった。

 滑稽で哀れな、私の醜態。



「羊が十七匹……」

 寂しい夜。彼は彼女と愛を語らい、二人だけの時間を積み重ねていく。
 あたしはただひとり、この小さな羊を相棒に孤独な時間を費やすだけ。

 少しだけ開けた窓から、長雨の余韻が匂いとなって零れる。

「羊が四八匹……」

 何度眠れぬ夜を過ごせば、私は私を愛してくれる人を見つけることが出来るのだろう。
 抱き枕にすがりついて、寂しさを紛らわすような真似を、あと何回繰り返せばいいのだろう。

 彼の腕に包まれても、もう眠ることは出来ない。





 雨ばかりの日々に、突如現れた太陽は、夏を予感させる灼熱を降り注ぐ。
 久しぶりに訪れることが出来た会社の屋上で、私は三人掛けのベンチを占領してぐったりと眠りを待っていた。
 パソコンを睨みつけるだけの時間は、睡眠時間の短い私にはきつい。
 昼休みは寝床を求めて、自分のデスクや会議室や屋上を点々とする。

 特に屋上は最高の寝床。

 明るい日差しも、鳥の鳴き声も、どこからか聞こえてくる同僚の愚痴も、心地いい子守唄だ。

「羊が七十二匹……」

 私が穏やかに眠れる唯一の時間。隣に誰もいなくても、独りではないと思えるから。

「羊が九十八匹……」

 誰かを愛したい。無性に、ただ一人を。求めてる。
 内臓が内側から絞られるように、きりきりとした苦しさだけが支配する。

「羊が百八匹……」

 煩悩の数。百八つ叩いたところで、消えるわけない。
 人は欲望だけをむさぼる。
 相手の気持ちなんて、お構いなしに。

 彼のことじゃない。私のことだ。

 寂しいから彼を拒否できない。彼を無くしたら、この寂しさを何で埋めればいい?
 体だけでもいい。繋がっていたい。
 愛がなくてもいい。抱かれていたい。

 そうすることしか、今の私を支える術を、私は知らない。

「羊が百三十五匹……」
「狼が一匹」

 突然頭上から降ってきた声に、私は勢いよく体を起こした。

「おはよ」
「……なにしてんの?」
「眠り姫を起こすためにチューしようか悩んでたところ」

 ベンチの背もたれに寄りかかって笑う男。
 同期の木内だった。
 もさもさの黒い髪が風で揺れている。銀縁眼鏡を中指で直したら、その奥の切れ長の目が太陽の光を受けて光った。

「眠ってないし」
「今時、羊の数を数えるなんてべたな方法で寝ようとするわけないかと思って。寝言かと思ったよ」
「……羊は安眠を守る正義の味方なんだからね。うちの羊を見せてやりたいわ」

 抱き枕を抱きしめる真似をする。あのふわふわの温もりは、私の最後の砦。

「狼を抱いて寝たほうが、幸せだよ」
「危険すぎ。いつ食われるかわかったもんじゃない」
「俺は狼だけど。隣で寝てる女は食わない。味を確かめる」
「変態」

 薄い唇をあげて、挑むような鋭い目を向けてくる。おもわず怯んで、私は彼から目をそらした。

「次からは羊と一緒に狼も数えるといい。きっと眠れるさ。あくび姫」

 スーツをひるがえして、彼は背中を向けたまま手を振り去っていく。その背中を見送って、「あくび姫だと」と口を尖らせた。





「羊が百八九匹……」

 眠れぬ夜は、羊を数える。

「羊が二百二十三匹……狼が一匹……」

 眠れぬ昼休みは、羊と狼を数える。
 するとどこからかエサを食べない狼がやって来る。

 欲望に逆らって、味見しかしない、変な狼。

「食べたくならない?」
「食べていいなら。少しずつ。一生かけて、食い尽くさないように食べ続けるよ」

 哀れな子羊は、いつだって狼に食われるのだ。
 それでも、一生かけてなら、食われてもいいかもしれない。




 チャイムの音が聞こえて、私はゆっくりと玄関に向かう。
 そこで待つ彼に、私はくぐもった声で返事をする。
 チェーンをつけたままのドアの向こうで、にやけた面をさらす彼に、私は初めて彼の本当の顔を見た気がした。

「もう、来ないで」
「なんで」

 一瞬にして凍りつく彼の顔に、唾を吐きかけてたくなる。

「隣で眠るのは、味見しかしない狼がいいの」

 何も残らず食い尽くされるのは、もうごめんだ。
 骨の髄までしゃぶりつくされ、何もなくなるのは、私自身。

「あんたはもういらない。羊の抱き枕がいるもの」
「寂しい女だな」

 捨て台詞のような彼の言葉を、鼻で笑って受け流す。

「あんたといるよりは、寂しくない」


 



 眠れぬ夜は、終わらない。
 寂しさは消えることはない。
 それでも、少しだけ強くなれた気がするから。
 いつか隣にいるかもしれない狼を思い、正義の味方の羊を抱いて、浅い眠りに落ちる夜。
拍手する 2008.12.02 Tuesday * 00:36 | 短編小説(ブログのみ公開) | comments(0) | trackbacks(0)
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