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* 海の音、君の声(仮)第6話
「海の音、君の声(仮)」第6話執筆しましたー。

さわりのみ公開。


夏の匂いが好き。
夏の日差しが好き。
夕暮れの寂しいかんじとか、夜の涼しい風とか。

三人称にしたのは、そういう夏の風景を描写しながら、主人公の心の中の空しさとか苦しさとか恋心とかを表現できたらなーと思ったので。
難しいですが(ーー;

「ライオンの子」よりもだいぶ女の子っぽい柔らかい書き方をしてるつもりなんだけど、わかりますかね?笑

タイトルは「神様がくれた。」に変更しようと思ってます。

「空に落ちる。」の主人公同様、いつもいる現実から少しずれた場所に行くことで、
自分の中の強さを見つける物語にしたいなーなんて。
現実逃避シリーズだな(笑)

そんなかんじで、どうぞですー。

第6話

↓↓↓


 



  東向きの窓から差し込んでくる明るい太陽の光とうるさい蝉の声で目を覚まして、実由は大きく腕を上に伸ばした。
 どこからともなく、潮騒の音が聞こえてくる気がする。パタンとか、ガシャンとか、人が騒がしく動いている音もする。
 実由の家はどちらかというと静かな家庭だ。父も母も働いていて、朝早くに出て行ってしまうから、いつもぎりぎりに起きる実由とは顔も会わすこともない。兄とは朝食を食べる時に会うけれど、低血圧の兄はいつも不機嫌そうで、実由から話しかけることなんてほとんど無かった。
 幾何学模様のタオルケットをどかして、布団から畳の上にごろりと転がる。イグサの香りが鼻を通り抜けて、清々しい気持ちになった。
 網戸越しに見える木に、蝉がしがみついている。けたたましく鳴く声は、目覚まし時計もよりも強烈だ。
 厚志と和斗の母、里美が貸してくれたTシャツに着替える。普段だったら絶対着たくないリアルな犬の刺繍が入ったダサいTシャツだ。けれど、里美の気遣いをムダにしたくなくて、袖を通す。
 一階に下りると、喧騒が増す。里美の笑い声と厚志の柔らかい声が食堂から聞こえてくる。
 先に洗面所で顔を洗い、食堂へと向かった。
 昨日、実由の母、玲子と里美は和やかに電話で会話を交わしていた。二人の間でどんな会話があったのかは、里美の声からしか推測できなかったけれど、「大丈夫ですよ、お任せ下さい」という言葉と、「こちらこそよろしくお願いします」と里美が頭を下げたことで、実由のアルバイトが決定したことはわかった。
 実由のアルバイト中に使う諸々の生活雑貨とか洋服は、宅急便で送ってくれるらしい。取りに帰るのに、と思ったが、家出中だったことを思い出した。
 家出中に家から家出グッズを送ってもらうのもおかしな話だが、取りに帰るのもおかしな話だ。
 母の行動がちょっと変なのは、実由にもしっかり遺伝している、と実由自身思う。

 高山食堂は民宿も併設している食堂だ。朝の六時という時間でも、食堂にはすでに客らしき老人や若者の姿があった。カウンターに老人が一人、テーブルにカップルらしき若者が二人。
 里美はカウンターに座った老人と話をしながら、包丁で何かを切っていた。その脇で、厚志がサラダを盛り付けている。

「おはようございます」

 食堂のキッチンは、家の廊下と繋がっている。実由は廊下から顔を出して、一番近くにいた厚志に声をかけた。

「ああ、おはよう。手伝ってもらっていい?」
「はい」

 手伝ってもらうもなにも、アルバイトだから当然なのに、と実由はすぐに廊下から下りて、置いてあったビーチサンダルを履く。

「このサラダ、あそこにいるカップルに出してきて。そこに皿あるから」

 渡されたサラダを片手に、棚に並んだ小皿を二枚つかむ。眠そうなカップルのテーブルで「どうぞ」とサラダを差し出すと、「ああ、どうも」と受け取ってもらえた。

「あのカップルは、昨日からうちに宿泊してくれてるんだよ。お客さんはここで朝飯と夕飯を取るんだ」

 戻ってきた実由に厚志は小声で耳打ちした。急に距離が近付いたから、実由は肩をすくませてしまう。
 厚志としゃべるのは、少し照れる。

「もう少ししたら、海の家の方に行くから、みゅーちゃんもおいで」

 トンと肩を叩いて、キッチンの奥に行ってしまった。

拍手する 2008.09.22 Monday * 01:38 | 執筆中小説 | comments(0) | trackbacks(0)
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