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拍手する 2009.11.05 Thursday * | - | - | -
* 短編「ゴミ屋敷にリセットボタン」
習作です。
得意技、推敲いっさいなし。
いつか直してなろうの方に投稿するかも・・・

短編が書きたくてしょうがないという衝動の元に、練りもせずに書いたので、
起承転結ない(笑)

お暇な人、読んでみてくださーい

↓↓↓

ゴミ屋敷にリセットボタン
「ぬおおおおおおおおおおおおお!」

 衝撃のあまり、背中から落ちた。
 ふかふかのベッドの下は、これまたふかふかの絨毯だったから痛くはなかったけれど、あまりに驚きすぎて、顎がはずれかけた。
 顎をなでながら、起き上がる。
 ベッドの上でくたっと寝ているのは・・・…どう見ても、見知らぬ男。
 昨晩は浴びるように酒を飲んだ。不覚にも記憶は一切ない。酔っ払いがカーネルおじさんやペコちゃんを持ち帰るのと同じように、私は男を持ち帰ったというのか。

「ん……ん?」

 柔らかいこげ茶色の髪を掻きながら、男は目を開けた。切れ長の目はすっきりとした二重で、色素が薄いのか瞳の色が茶色い。

「おはよ」

 寝ぼけた低い声で、男は優しそうに笑う。
 急に甘い空気に変わった気がして、この男やるな、とつい感心してしまった。

「どうしたの?」

 ベッドの下で呆然と座る私を訝しそうに見てくる。
 男があくびしながら上半身を起こすと布団がはらりと落ちて、すらりとした裸体が現れた。

「きゃーーーーーー! ごめんなさい、ごめんなさい! 私、あなたのこと、襲っちゃったんだ! ほんとにごめんなさい! 悪気はなかったんですー!」

 だから酒は恐ろしいんだ! 飲んでも飲まれるな、ってよく言うのに!
 土下座して深々と頭を下げたら、ブフ、という吹きだす音が聞こえた。

「あのさ、おかしくない? 普通、男の俺が謝る方だろ? 襲うのはたいてい男なんだし」
「だって、私、酒癖悪いもん!」

 超速で顔をあげ、ブンブンと頭を振って否定したら、男は腹を抱えて笑い出した。

「さけぐせ、わる、いもんって! ウケる」
「あ、あのー……」
「昨日のこと、覚えてないの?」

 はい、覚えてません。
 そう素直に答えてしまうのも悪い気がして、目を泳がせる。
 分厚いグレーのカーテンの隙間から、零れ落ちる朝日。南国をイメージしてなのか、細長い葉の木が淡く光るライトの下で大きな影を作っている。
 やっぱり、ここ、ラブホ?

「昨日の夜、仕事帰りで歩いてたら、いきなりあんたが話しかけてきたんだよ」
「……まさかと思うけど、泥酔状態だった?」

 男は満面の笑顔でうなずいた。やっぱりね、と力無く笑うしかない。

「ほっぺ真っ赤にして目うるうるさせてさ、『私とにゃんにゃんしませんか?』って話しかけてきたんだぜ」

 にゃ、にゃんにゃん……。

「しかも、その後、『私とホテルにトゥギャザーしましょう』って言ってきたんだよ。笑い死ぬかと思った」

 トゥギャザーってどこのルーだよっ!
 なんという醜態。お母さん、私、嫁入り前なのにこんな女に成り下がってしまいました。ごめんなさい。

「面白くってついていっちゃったよ」
「……で、ホテルにいるってことは、あなたと私、合体したってことですよね?」
「合体って! ロボットじゃないんだから」

 くすくすと笑い、男は私の方に身を乗り出して来た。筋肉質ではないけど脂肪はついていない体が目の前に迫ってきて、のけぞる。

「今更だけど、マッパだよ、あんた」

 頭の上からバスローブをかぶらされて、わたわたと手をかく。
 ちょ、マッパって? マッハじゃないよね? まっぱだかってこと?!

「ぎゃーーーー! 私、ストリーキングは趣味じゃないです!」
「言わなくってもそうでしょう、普通」

 もがきながら必死に体を隠して、やっとバスローブで見えなくなった視界が戻ってくる。
 男はいつの間にかベッドの端にいて、煙草を吸っていた。

「あんた、何かあったの?」
「な、なにかって?」
「やってるとき、泣いたから」

 やってる時……やっぱりやっちゃったのか、私……。がっくりと肩を落とし、バスローブを押さえつける。
 これじゃあ、あいつと一緒だ。

「彼氏が、私以外の女と、ヤってた」

 返事の代わりに、煙草の煙がたなびいた。

「だから、仕返ししてやりたくなったんだと思う……。酒飲みまくった後の行動だから、自分でもよくわかんないけど」
「他の男に抱かれてやろう、って自暴自棄になった?」

 うなずくことしか出来ない。バカな行動しか起こせない自分が呪わしい。何にもならないことをして、赤の他人を巻き込んで、一体私は何がしたいんだ。

「彼氏のこと、好きなの?」
「……たぶん」

 女からの告発だった。知らない女から私の携帯電話に突然電話がかかってきて、私が「もしもし」を言い終わらないうちに、女は叫んだのだ。

「あいつ、あんたのもんじゃないから。あたしともう何回もセックスしてんだよ」

 込み上げてきたのは、その女への怒りと、彼氏への嫌悪感。彼女以外の女を平気で抱いて、何食わぬ顔で私をも抱く、その神経に怖気が走った。
 冷めやらない感情を酒で晴らそうと飲みに飲みに飲んで、気付けば一人。路頭をさまよい、白いシャツと藍色のネクタイの男を見つけた。まぶしく見えたのは、酒のせいだったのか、この男が本当に輝いていたのか。

 少しずつ断片的な記憶がとつとつと出てきて、頭を抱える。

「男は、皆そうなの? 誰でも、抱けるの?」
「さあ。男によるんじゃない? 俺は、選ぶよ」
「選ぶ?」
「いいなーって思った女しか抱かないし、彼女がいるときは極力他の女は見ない」
「極力って」

 男は狩人だからね、と爽やかに笑った。
 この男、変。テニスの後に爽やかな汗をぬぐってるみたいに、ミントみたいなオーラを放ってる。

「別れたら?」
「……うん」

 返事はしたけれど、それは「YES」の意味を含まない。ただ、うなずいただけ。別れる? その選択肢を、私は選ぶのだろうか。

「リセット」

 ぽん、と布団を叩く手。ごつごつした男の手は、頼りがいがあって、触れたくなる。
 ベッドの上に這い上がり、男に背を向けて座る。

 リセット。出来るのだろうか? もう一度初めから、やり直せるのだろうか。

「押してやってもいいよ、俺が。リセットボタン」

 男の手が私の腰に回る。私のおなかを叩いてくるその仕草は、まるで赤ん坊をあやす父親の手のようだった。
 彼の手を握り、首を横に振る。
 人生にリセットボタンなんてない。やり直すには、なにかを捨てるしかない。

「捨てられないよ、私には」
「ゴミ屋敷に住む女になるぜ、そんなんじゃ」

 振り返れば、男の顔が目の前に迫る。頬をつかまれ、唇をかまれた。「痛い」とわめいたら、優しくついばむようなキスを繰り返してきて、そっと割って入ってくる舌に、私は答えてしまった。
 体の芯が熱くなる。息が苦しいのに止めることも出来ず、絡み合う軟体動物みたいなそれを必死に追い求める。
 背中に回した手が彼の体の熱を感じ取って、じわりじわりと疼いてくる。
 堕ちる、そう思った。
 この男、絶対やばい。

「まだ時間はあるよ」
「うん……」

 私はバカだ。蛾が光源に向かって羽ばたくように、寄り添うものを追い求めてる。
 がむしゃらに。ひたすらに。無意識のうちに。
 必要とされたい。誰かの、誰かのためだけの自分でいたい。私でなくてもよいのなら、私という人間が必要とされていないのと同じなんだ。

「あんたが彼氏と別れるなら、俺のところ来ればいいよ」

 どうせ、戯言。わかってるけど、甘えたくなる。

「行ってやってもいいけど、私が自分で見つけるから、今日はこのまま別れて」

 甘美な誘惑に溺れるのは、きっとまだ早い。
 彼の首筋に舌を這わせながら、ニイ、と小悪魔っぽく笑ってやった。小悪魔っぽいってこういうかんじでいいのか、ちょっと不安だけど。

「見つけるってどうやって?」
「運命の相手なら、また会えるんじゃないかな」

 運命なんて、それこそ妄言。あるわけないものにすがりつく気なんてない。
 でも、また会えたなら。

「ねえ、名前だけ、教えてよ」
「タカシ」
「覚えた」

 チュ、と彼の頬にキスを落として、体を離す。

「あんたの名前は?」
「ナイショ」

 一夜だけの過ち。だけど、始まりの合図。
 ゴミ屋敷になる前に、すべてを一掃して。

 私は、新しく始めるんだ。

 そして、その時、この男とまた会えたら。
 その時は、また違う始まりに期待をしよう。

 ラブホテルを出たら、きらめくような朝の光が目に飛び込んできた。
 目を細めて空を見上げて、ふっと笑う。
 昨日の夜、雨でも降っていたのだろうか。地面に残る水たまりに空が映っていた。
 立ち止まり、覗き込むと、私の顔が水面で揺らいでいた。

 足を弾ませ、水たまりを飛び越える。
 飛んだ瞬間、心も弾んだ。

 今日が、始まる。


***

なにかっつーと浮気ネタを出してしまう笑
男と女のケンカの原因って様々だけど、そりゃケンカするわ!って説明しなくても簡単に納得するのが「浮気」だから、つい使ってしまいます(^^;
拍手する 2008.09.12 Friday * 03:31 | 短編小説(ブログのみ公開) | comments(0) | trackbacks(0)
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