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拍手する 2009.11.05 Thursday * | - | - | -
* 海の音〜差し込み2話
海の音、君の声(仮)の2話にぶちこむ予定のやつを書きました。

恋愛の予定でかいてんだけど、恋愛より違うものが強い話になりそう(^^;

まあ、こうしないと恋愛は書けないから、これでいいのだ。

いつもの通り、さわりのみ。


第2話(差し込み予定)

 家出してから二日目の夜だった。
 実由は行く当てもなく、海岸沿いをふらふらと歩いていた。
 お風呂に入っていないせいでべたついた体と、それ以上にべっとりと気持ち悪い髪の毛を嫌悪しながら、それでも家に帰るつもりはなかった。
 海側から吹き付ける湿気交じりの風が首筋をなぞって体を冷やしてくれる。
 実由は夏のこの空気が嫌いではなかった。これでもかと地面を焦がした太陽が沈み、名残を残したまま夜がやって来る。じとじとした大気の中を時折風が吹けば、一瞬汗が引く。

「おっきいな」

 海の大きさに比べれば、実由が抱える物思いなんて、ちっぽけすぎる。けれど、そのちっぽけなものはずしりと重くて、抱えて持つには苦しすぎた。なぜこんなに重いのか。それさえもわからないのに、それは背中にはりついて取れそうもない。
 あがいてもあがいても、どんどん重さを増していくだけで、実由はただ混乱するだけだった。
 しばらく歩いたところで、実由は白い何かが動いているのを見つけた。楕円形の固まりみたいなそれは四本足をパタパタと動かして、闇夜に飲まれていく。
 海沿いに小さな灯台のような形をした円錐形の建物が見える。その方向に『何か』は向かっているようだった。
 幽霊か? と一瞬思ったが、あの動きは犬だとすぐに確信して、実由は好奇心に後押しされて小走りでその後を追うことにした。




「わんちゃーん」

 誰もいないのに、ついつい小声で犬を呼ぶ。静かすぎる建物周辺を足音さえたてないように、気を使いながら進む。
門には『大潮水族館』と書かれていた。この建物はどうやら水族館だったようだ。門にはチェーンをかけているだけだったから、実由でもすんなり侵入することができた。
 犬の姿はどこにも見えない。波の音だけが聞こえる。世界には実由しか存在していないような、何の気配もない場所。
 急に怖くなって、実由は自分の腕を何度もさすった。

「――な……そ……」

 ふいに人の声がした気がして、実由はきょろきょろとあたりを見回した。大きな駐車場の入り口に実由は立っていたのだが、水族館の方から、声は漏れている。

「太郎、どこ行ってたんだ」

 声がしたほうへ進むうち、その声はだんだんとはっきり聞こえてきた。低いしわがれた声。だけど妙にでかくて、通る声だった。

「太郎、動くな」

 太郎、と呼ばれているのは、おそらく先ほどの犬だろう。こんな時間に散歩でもしてるのだろうか、と実由は腕時計を見た。もう二時を回っている。

「太郎!」

 犬の鳴き声が空に溶けていく。その声に反応してか、どこからともなく、別の犬の鳴き声が上がった。
 それに気を取られた瞬間だった。実由の足にふわふわな物体がしがみついたのだ。実由はあまりに驚いて、悲鳴さえあげられなかった。あんぐり開いた口からは息さえ吐き出せない。

「太郎、何してるんだ!」

 ガサリと生垣から顔を出したのは、白髪の老人だった。しゃんと伸びた背筋とたっぷりの髪の毛。ベートーベンのような髪形をしたその老人は、鋭い目を実由に向けた。たるんだ皮膚の下に力強い黒目が光り、ふさふさの白い眉毛がその存在を主張する。

「嬢ちゃん、こんな夜中に何してんだ」
「おじいちゃんこそ、何してんですか」

 しがみついたままの犬は実由の太ももを掴んで、腰を振っている。嬉しそうにハッハと息を吐き出し、実由を見上げていた。

「俺は家出だ」
「私も家出です」
「なんだ、そうか」


―‐―‐―‐―

おっさん通り越しておじいさん登場。

拍手する 2008.08.10 Sunday * 02:59 | 執筆中小説 | comments(0) | trackbacks(0)
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